小山浅間神社 震災復旧工事(千葉県松戸市)
小山浅間神社 震災復旧工事 施工内容御社殿改修(基礎新設・拝殿屋根替え及び改修・幣殿新築・本殿改修) |
小高い山頂に位置する神社。道路もなく、施工困難な状況でした。そこでトロッコを作って資材運搬を行うなど、皆様の期待に応えるべく様々な工夫をしました。
ご依頼の経緯
この神社は、浅間神社の名の通り、小高い山の上に位置し、木々に囲まれた厳かな神社でした。
しかし、2011年の東日本大震災により、大きな被害を受けてしまいました。
被災状況としては、境内にある石碑や石灯篭などがほとんど倒壊しました。高さ1.5mほどの石垣擁壁も崩れてしまっていました。
社殿の倒壊は免れたのですが、経年により緩んでいた地盤に大地震を受けたための、建物全般が基礎から傾いてしまいました。
神社を守ってきた氏子の皆様も大きなショックを受けましたが、「一日も早く修復したい」との声が集まりました。早速、何件かの地元の建設会社に相談したそうですが、施工内容や工事費などがなかなか折り合わず、困っていたそうです。
そこで、皆様から宮司様にご相談をされたところ、私どもが何度か別の神社の工事でご縁をいただいていたこともあり、「織戸に話を聞いてみてはどうか」ということになり、ご相談を受けました。
工夫したこと
施工内容としては、まず、社殿まわりの改修から始めました。すでに建物が建っているので、そのまま基礎工事を行うことはできません。そこで新しい基礎を作るために、幣殿を取り壊し、拝殿と本殿を分割して、それぞれ「曳家(ひきや)」をして建物を移動しました。その上で新しい基礎を完成させて建物を元の位置に戻し、水平な状態に正しました。次に、ダメージを受けた箇所を修繕し、幣殿を新しく設えました。
「地震があっても簡単に被害を受けないように出来ないものか」というご相談もあったため、建物自体を軽くするために、瓦屋根を銅板屋根に改修しました。銅板屋根にすることは地震対策の他に、森の木々から枝が折れて落ちて来たり、落ち葉が降り積もっても、メンテナンスを容易にする効果もあります。
また、基礎工事が完了した時点で、石碑・石灯篭・石垣の修理を同時並行で進めることにしました。
この改修工事で最も問題になったのが、資材・機材の現場搬入です。
神社がある山の上まで通じる道路がないので、車が登ることができません。現場に行くには長さ80mもある石段を登るしかないのです。これでは大規模な工事に伴う資材や機材の搬入はできません。灯篭の材料になる石ひとつとっても人間の力で持ち上がるものではありません。
そこで、長い石段に鉄骨製のレールを敷いて、自家製の「トロッコ」を製作することを思いつきました。
“ケーブルカー” の仕組みです。巨大なウィンチと、その動力となる巨大な発電機を設置し、ワイヤーで鉄製のトロッコを動かして、資材や小型重機を運搬できるようにしました。
今回の工事が無事に完了した最大のポイントは、このトロッコを思いつき、実際に使用できるように造り上げて事だったと、感慨深く思い出します。
神社の震災復旧工事アーカイブ
小山浅間神社は、東日本大震災の被害を受け、立ち入り禁止になっていました。
コンクリートの天水桶(てんすいおけ)も倒れています。
灯篭や狛犬が崩れている様子です。
石垣が崩れている様子です。雨が当たらないようにビニールシートをかぶせています。
基礎部分は、本殿の石積みが崩れて歪み、拝殿周りも崩れてしまいました。
建物はほぼ被害がなかったようですが、一部瓦が落ちたりしていましたので、雨漏りが心配です。
資材の運搬のために、鉄鋼屋と協力して、階段にトロッコをつくりました。レールの長さは70m以上あります。歩いて上るだけでも大変ですので、荷物を運ぶとなるとトロッコが必要となります。
ウインチと発電機をリースして運び込んで設置しました。トロッコの移動は、このウインチの操作で行います。
新しい基礎を工事するために、曳屋(ひきや)と言って、建物を持ち上げ、移動させます。山の頂上で限られたスペースで工事を行うために、曳屋の移動場所にも工夫が必要です。
奥にあった本殿は、建物があった場所の右側に移動させました。
屋根は瓦から銅板に変えました。屋根が軽くなり地震に強くなります。
新しい石垣と玉垣を施工しました。
石垣は、予算、場所、時間のことを考え、コンクリートにしました。表面は自然石に見えるような吹付仕上げにしました。側面に寄付者銘板を設置しました。尊い寄付によって神社が支えられています。
左側の新しい板壁(いたかべ)は、もともと出入り口がありました。この出入り口は使用されないことと、建物の強度を高めるために、板壁に変更しました。新しい材木は白っぽい色をしていますが、いずれ黒くなり、馴染んできます。
倒れていた灯篭は、補修をするなどして元の通りに復元し、参道も補修しました。
幣殿(へいでん)部分は、本殿と拝殿を曳屋し基礎工事を行うために、あえて取り壊して、新築しました。お客様のご要望でもある「基礎をきちんと修理したい」ということで、このような工夫をしました。
階段を新調しました。賽銭箱は、高さを調整するために、台座を設置しました。
神社の修理が完成しました。