「宮大工さんは、普通の大工さんとどこが違うんですか?」
多くの方々によく聞かれます。その答え方は様々ですが、あえて簡潔に言うなら「『社寺建築のあるべき姿』と、社寺建築の『決まりごと』を熟知し、神社仏閣ならではの美しさを形にする『技術』を持った大工さん」という事だと思います。
長い歴史の中で洗練されてきた日本の社寺建築。ここで言う「決まりごと」とは、社寺建築工法の規範となるもので、『規矩術』(きくじゅつ)や『木割り』といったものです。
これは、建物の柱間や高さ、各部材の寸法などを詳細に割り出す比率や計算方法・構造・おさまりなどを表したもので、社寺建築の「基準」です。この基準に忠実に造るだけでも、見栄えの良い神社仏閣を建てることは可能です。
宮大工たちの「智慧」と「技」
それらの基本を踏まえた上で、敷地の状況・宗派・施主様の現代的なご希望にも答え、なおかつ決められた予算の範囲で、最高の社寺建築を建立するのが、私共の考える「本物の宮大工」です。
たとえば、単に「決まりごと」を守るだけでなく、日頃の仏事や祭事、多くの方が集る時の諸事情なども考慮して間取りを工夫したり、「決まりごと」以上に美しいものを造るため、長年の経験から来る「職人のカン」をも駆使し、時には屋根の反りを緩くしたり、強くしたり、ある部材を太くしたり細くしたり、必要に応じて木割を崩すなど、当社独自のアレンジをする事もあります。
最近では、『規矩術』や『木割り』は書籍になって市販されていますので誰でも学ぶことはできますが、「この継ぎ手はここを一割ほど太くしたほうが強い」「この部材は木割より五分大きくしたほうが美しい」というように、宮大工たちの豊富な経験によって積み上げられた「智恵」、教科書に載っていない「技」があり、それらは、現場の宮大工たちが口伝でのみ継承してきた、宮大工ならではの独自の技術です。